以下の記事は2014年時の記事です。
Vol.16 「中東呼吸器症候群(MERS)」
MERS(Middle East Respiratory Syndrome:中東呼吸器症候群)は、2012年に中東への渡航歴がある症例から発見された新種のコロナウイルスによる感染症である。
2012年9月以降、2013年11月20日現在までにWHOに報告されたMERS感染例は、中東及び欧州で計157例、うち死亡例は計66例。
MERSコロナウイルス感染者が確認されている国は次のとおり――サウジアラビア、イギリス、イタリア、ヨルダン、フランス、チュニジア、カタール、アラブ首長国連邦、クウェート、オマーン、スペイン。
フランス、イタリア、チュニジア、英国では、中東への渡航歴がなく、感染確定患者や感染疑い患者と濃厚接触者との間で、限定的な地域内感染が見られている。
感染すると2~15日の潜伏期を経て、重症の肺炎、下痢、腎障害等を引き起こす。感染者は50歳代前後で多く、60歳以上での致死率は高い。死亡例のほとんどは糖尿病や心肺疾患などの他の慢性疾患を患っていた。
このウイルスに対抗するための特別な治療薬やワクチンは無く、集中治療室管理などの対症療法となる。
ヒトからヒトへの感染は限定的で、家族や病院での濃厚接触による感染報告はあるものの、市中において肺炎患者から肺炎患者を連続的に生じさせるような「持続的なヒトからヒトへの感染」は起こっていない。
今のところ地域流行に留まっていると言えるが、ウイルスが検出されたにもかかわらず全く症状を示さない不顕性感染も報告されており、病原体の広がりは定かでない。
世界保健機関(WHO)は関係国と情報のやり取りを行い、リスク評価を行なっているが、今のところ国際的な緊急事態には至っていないと判断し、渡航制限などにつながる警戒水準の引き上げはおこなっていない。
- コロナウイルス
- コロナウイルス(coronavirus)は、哺乳類・鳥類にさまざまな疾患を引き起こす一本鎖RNAウイルス。表面に花弁状の突起があり、太陽のコロナのように見えることから名付けられた。
- 飛沫感染や接触感染で伝播し、通常は軽度から中等度の呼吸器症状を起こすが、SARSコロナウイルスのように重症化するものもある。
- SARS
- SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome:重症急性呼吸器症候群)は、中国広東省で最初の症例が起こったとされる新型コロナウイルスの「SARSコロナウイルス」が原因の感染症。2003年に世界中で大きな問題となった。
- 2003年7月に制圧宣言が出されるまでの間に8,069人が感染し、775人が死亡した。
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- SFTS 重症熱性血小板減少症候群
- Vol.17:
- ノロウイルスによる感染性胃腸炎
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- 中東呼吸器症候群(MERS)
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- 鳥インフルエンザ
- Vol.14:
- インフルエンザウイルス
- Vol.13:
- インフルエンザ
- Vol.12:
- 核分裂生成物/放射線・放射性物質・放射能/被曝(ひばく)/被曝許容限度
- Vol.11:
- 放射線障害 しくみ/放射線障害 しきい値
- Vol.10:
- ベクレル(Bq)/グレイ(Gy)/シーベルト(Sv)/ベクレル・グレイ・シーベルトの関係/ベクレルとシーベルトの換算
- Vol.09:
- 新型出生前診断
- Vol.08:
- 小児脳死臓器移植の現在
- Vol.07:
- 子供の脳死と臓器移植
- Vol.06:
- 臓器移植法改正後の問題点
- Vol.05:
- 移植を脳死に頼れるか
- Vol.04:
- なぜ脳死が問題になったか/脳死とはなにか/脳死判定基準
- Vol.03:
- 再生医療実現化プロジェクト
- Vol.02:
- 再生医療研究と幹細胞
- Vol.01:
- 山中伸弥教授のノーベル賞受賞/iPS細胞とは