有機化学のオキテ36,37
問題
デンプンは植物などに含まれる多糖類で、希酸で加水分解すると構成単位である(1)となる。デンプンに、唾液やすい液に含まれる(2)を作用させると(1)が2分子結合した(3)を生じる。デンプンは(1)が直鎖状に結合した(4)と、枝分かれ構造をもつ(5)との混合物である。(4)はヨウ素デンプン反応を行うと(6)色を呈し、(5)の場合は(7)色を呈する。動物の肝臓や筋肉に貯蔵される多糖類は(8)である。結晶中の(1)は(9)構造をとるが、水溶液中では(9)構造と(10)構造のものが平衡状態で存在する。(10)構造をとるものは(11)基をもつため還元性を示し、(12)液を還元し、また(13)反応を呈する。二糖類のラクトースは(1)と(14)が結合したものである。
- 【問1】文中の(1)~(14)に適当な語句を入れよ。
- 【問2】文中の(9)構造と(10)構造の構造式を書きなさい。
- 【問3】デンプン72.9gを水に溶かし希硫酸を加えて加熱し、完全に加水分解したときに得られる(1)は何gか。
C = 12.0、H = 1.00、O = 16.0
<昭和大学医学部 一部改>
解答と解説
<解答>
-
【問1】
- (1)グルコース(ブドウ糖)
- (2)アミラーゼ
- (3)マルトース(麦芽糖)
- (4)アミロース
- (5)アミロペクチン
- (6)濃青
- (7)赤紫
- (8)グリコーゲン
- (9)環状
- (10)鎖状
- (11)アルデヒド
- (12)フェーリング
- (13)銀鏡
- (14)ガラクトース
-
【問2】
(9) (10) - 【問3】81.0g
<解説>
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【問1】デンプンはα-グルコースを構成単位とする多糖類で、アミラーゼによりデキストリンを経てα-グルコースが2分子結合したマルトースに加水分解される。またデンプンは多数のα-グルコースの1位と4位のヒドロキシ基どうしがつぎつぎと縮合した直鎖状構造をもつアミロースと、それに加えて1位と6位のヒドロキシ基どうしも所々で縮合をした枝分かれ構造をもつアミロペクチンの混合物となっている。
アミロースとアミロペクチンはヨウ素に対しての呈色反応が異なり、アミロースは濃青色、アミロペクチンは赤紫色を呈する。動物の貯蔵性炭水化物はグリコーゲンでアミロペクチンと似た構造をもつが、さらに枝分かれが多く、分子量も大きい。
結晶中のグルコースは環状構造をとる。水溶液中で生じるグルコースの鎖状構造はアルデヒド基をもち還元性を示す。
二糖類のラクトースはグルコースとガラクトースがグリコシド結合したものである。 - 【問2】グルコースのα型、β型、鎖状構造は正確に書けるように練習しておく。
-
【問3】デンプンを完全に加水分解したときの化学反応式は次式のようになる。
(C6H10O5)n + nH2O → nC6H12O6
生成するグルコースの量をXgとすると、デンプンの量72.9gと化学反応式の係数の関係より(式量C6H10O5=162、分子量C6H12O6=180)
162n:n×180 = 72.9:X
X = 81.0(g)
<補足>
- 1 デンプンのヨウ素に対しての呈色反応は青紫色(ヨウ素デンプン反応)、グリコーゲンのヨウ素に対しての呈色反応は赤褐色である。
- 2 (9)の構造としては同じ環状構造のβ-グルコースも考えられるが通常の結晶中ではα-グルコースの構造をとっている。
- 3 デンプンの分子量は充分に大きいので(nが充分に大きいので)、本来両端に存在しなければならないH-、-OH分は無視して計算ができる。
掟36. デンプンに含まれるアミロースやアミロペクチンの構造や、それぞれのヨウ素に対する呈色反応等を説明できるようにしておくべし。
掟37. デンプンの分子式を(C6H10O5)nと考える計算問題に慣れておくべし(nは計算していくと消える場合が多い)。