有機化学のオキテ24
問題
リノール酸のみを含むトリグリセリド(A)がある。Aは室温では( (イ) )である。Aをパラジウムを触媒として完全に水素化を行うと( (ロ) )のみから成る油脂と同じものができる。油脂の化学的性質を知るために、けん化価やヨウ素価が測定される。けん化価とは油脂1gをけん化するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数で表される。ヨウ素価は油脂100gに付加するヨウ素のグラム数で示される。
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【問1】文中の((イ))、((ロ))に最適な語句を次の中から選べ。
- 固体
- 液体
- 気体
- ステアリン酸
- オレイン酸
- パルミチン酸
- 【問2】Aのヨウ素価およびけん化価を求めよ。ただし、C = 12.0、O = 16.0、H = 1.0、K = 39.0、I = 127とし、計算の過程も簡単に記せ。解答は有効数字3桁とせよ。
- 【問3】ヨウ素価、けん化価は油脂のどのような化学的性質の目安になる。
<久留米大学医学部>
解答と解説
<解答>
- 【問1】 (イ)液体 (ロ)ステアリン酸
- 【問2】 ヨウ素価:174 けん化価:191
- 【問3】 ヨウ素価は不飽和度の目安となり、ヨウ素価が大きい油脂は含まれる不飽和結合が多く、ヨウ素価の小さい油脂は含まれる不飽和結合が少ない。またけん化価は油脂を構成する脂肪酸の平均分子量の目安となり、けん化価の大きい油脂は構成する脂肪酸の平均分子量が小さくなり、けん化価の小さい油脂は構成する脂肪酸の平均分子量が大きくなる。
<解説>
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【問1】
- (イ)リノール酸は分子式C17H31COOHで表され、1分子中に炭素間二重結合を2つもつ高級不飽和脂肪酸である。リノール酸の様な炭素間二重結合を多くもつ脂肪酸のみを含む油脂は液体になる。
- (ロ)リノール酸に水素を付加するとステアリン酸(分子式C17H35COOH)になる。
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【問2】
Aの示性式はC3H5(OCOC17H31)3で分子量は878になる。A1分子中に6個の炭素間二重結合を含むので、A1mol(878g)にはヨウ素6mol(6×254g、I2=254)が付加する。ヨウ素価は油脂100gに付加するヨウ素のグラム数なので、ヨウ素価をXとすると、
878:6×254=100:X
X≒174A1mol(878g)をけん化するのには水酸化カリウム3mol(3×56.0g、KOH=56.0)が必要である。けん化価は油脂1gをけん化するのに必要なKOHのミリグラム数なので、けん化価をSとすると、
878:3×56.0×103=1:S
S≒191 -
【問3】
ヨウ素価は油脂中の炭素間二重結合の数に比例する。けん化価と油脂を構成する脂肪酸の分子量は反比例的な関係になっている。
<補足>
- 1 けん化価とヨウ素価の問題を解くときには両者の定義が必要になるので、必ず覚えておくこと。
- 2 よく出題される高級脂肪酸(nは1分子中の炭素間二重結合数)
- パルミチン酸 C15H31COOH(n=0)
- ステアリン酸 C17H35COOH(n=0)
- オレイン酸 C17H33COOH(n=1)
- リノール酸 C17H31COOH(n=2)
- リノレン酸 C17H29COOH(n=3)
掟24. けん化価とヨウ素価の定義は必ず覚えておくべし。