有機化学のオキテ21,22
問題
水素、炭素、酸素からなる化合物A、B、Cがある。次の実験結果(1)~(3)をもとに下の問に答えよ。
- (1)A、B、Cはいずれも同じ分子量88.0であり、A の18.0mgを燃焼させたところ、水14.7mg、二酸化炭素36.0mgが得られた。B、Cのそれぞれを18.0mgを燃焼させたときも同量の水と二酸化炭素が得られた。
- (2)A、B、Cのそれぞれに水と少量の酸を加え加熱したところ、A はU と V を、またBは W と X を生成し、さらに C は Y と Z を生成した。それらのうち、U 、 W 、 Y はカルボン酸であり、V、 X 、 Z はアルコールであった。
- (3)Vと X を酸化すると、アルデヒドを経て、どちらもカルボン酸を生じた。Vから生じたカルボン酸は W 、 Y と同じ化合物であり、その化合物をアンモニア性硝酸銀水溶液とともに試験管中で加熱するとガラス壁に銀を析出した。また、 Z を酸化するとケトンが生じた。C=12.0、H=1.00、O=16.0
-
【問1】Aの18.0mgに含まれる酸素は何mgか、次の中から最も近い値を選び、記号で答えよ
- イ.4.35 mg
- ロ.6.55 mg
- ハ.7.15 mg
- ニ.7.37 mg
- ホ.9.82 mg
- 【問2】A の分子式を記せ。
- 【問3】B の構造式を例にならって示せ。
-
【問4】Z を酸化して得たケトンについて述べた次の文のうち間違っているものをすべて選び、記号で示せ。
- イ.特有の臭いのある、無色で揮発性の液体であり、水と良くまざる。
- ロ.有機化合物を良く溶かすので、溶媒として用いられる。
- ハ.消毒剤、殺菌剤として用いられる。
- ニ.酢酸カルシウムを加熱(乾留)して得られる。
-
【問5】化合物U と反応して気体を発生するのは次の中のどれか。記号で示せ。
- イ.水酸化ナトリウム水溶液
- ロ.塩酸
- ニ.炭酸ナトリウム水溶液
- ホ.メタノール
- ヘ.アニリンの希塩酸水溶液
<順天堂大学医学部>
解答と解説
<解答>
- 【問1】ロ
- 【問2】C4H8O2
- 【問3】
- 【問4】ハ
- 【問5】ニ
<解説>
- 【問1】化合物A18.0mg中のC、H、Oの質量を求めると
- 【問2】原子数の比は 実験式はC2H4O(式量44.0)となり、分子量が88.0なので分子式はC4H8O2となると考えられる。
- 【問3】分子式C4H8O2で表されるエステルの構造式は次図の4種類である。 B を加水分解すると生成するカルボン酸Wは還元性を示すのでギ酸である。また、やはり B を加水分解して生成するアルコールXは酸化するとアルデヒドを経てカルボン酸になるため第1級アルコールである。(1)~(4)のうちギ酸のエステルは(1)か(2)で、(1)(2)のうち第1級アルコールのエステルは(1)なので、B の構造式は(1)と決まる。
- 【問4】Z は酸化生成物がケトンなので第2級アルコールである。(1)~(4)のエステルを分解して生じる第2級アルコールは2-プロパノールだけなのでZは2-プロパノールと確定する。2-プロパノールを酸化して生成するケトンはアセトン(CH3COCH3)であり、アセトンは消毒剤、殺菌剤としては用いないので、ハが答えとなる。(Cの構造式は(2)と決まる)
- 【問5】問3・問4より次の関係がわかっている。 A を加水分解すると生成するアルコール V は、酸化するとアルデヒドを経てカルボン酸になるので第1級アルコールである。また、 V を酸化して生じるカルボン酸はW、Yと同じ化合物なのでギ酸であることがわかるため、 V はメタノールと確定する。 V がメタノールならば A の構造式は(4)、Uはプロピオン酸と決まる。プロピオン酸は炭酸よりも強酸なので、炭酸の塩である炭酸ナトリウムと反応してCO2を発生する。
<補足>
C4H8O2で考えられる構造異性体は問3の解説の様にエステルで4種類あるが、他にカルボン酸で2種類ある。
掟21. 分子式C4H8O2で考えられるエステルの構造異性体4種類は全てすぐに書けるようにしておくべし。
掟22. エステルを加水分解して生じたカルボン酸が還元性を示す場合はギ酸を考えるべし。