有機化学のオキテ20

掟20. 構造決定問題では、ザイツェフ則やマルコフニコフ則も利用できるようにしておくべし。

問題

次の文章を読み、下の各問に答えなさい。

  • (1) [ A ]は炭素、水素、および酸素からなるエステルで、この3.06gを完全に加水分解するとカルボン酸[ B ]と1.80gの第一級アルコール[ C ]を生じる。
  • (2) [ C ]の組成は炭素60.02%、水素13.35%である。
  • (3) 0.75gの[ B ]と等モルのメタノール0.40gを濃硫酸の存在下で反応させると、0.93gの[ D ]が生成する。
  • (4) [ C ]は濃硫酸とともに160℃で加熱すると、常温常圧下で気体の[ E ]を生じる。
  • (5) [ E ]に硫酸を触媒にして水を付加させると、主に化合物[ F ]が生成する。
  • (6) [ F ]を二クロム酸カリウムの酸性溶液で酸化すると、化合物[ G ]となる。

問 [ A ]~[ G ]の各化合物について、それぞれの名称と示性式を示しなさい。

<獨協医科大学>

解答と解説

<解答>

  • A 酢酸プロピル CH3COOCH2CH2CH3
  • B 酢酸 CH3COOH
  • C 1-プロパノール CH3CH2CH2OH
  • D 酢酸メチル CH3COOCH3
  • E プロペン(プロピレン) CH2=CHCH3
  • F 2-プロパノール CH3CH(OH)CH3
  • G アセトン CH3COCH3

<解説>

  • (1)よりカルボン酸[ B ]0.75gとメタノール0.40gの物質量が等しいことがわかるので、[ B ]の分子量をMとすると(メタノールの分子量は32.0)
    0.75:0.40=M:32.0 M=60
    [ B ]は分子量60のカルボン酸なので酢酸CH3COOHと確定できる。
  • (2)よりアルコール[ C ]の炭素、水素、酸素の原子の比は解説図1 よって[ C ]の組成式はC3H8O(式量60.0)となる。[ C ]を第一級アルコールの1-プロパノールCH3CH2CH2OH(分子量60.0)と仮定すると(1)の反応は 解説図2 と考えられる。この反応式より反応するエステル[ A ]と生成するアルコール[ C ]の物質量は等しいことがわかるが、仮定した分子量と(1)の問題文の数値でそれぞれの物質量を計算すると 解説図3 となり[ A ]と[ C ]の物質量が等しいことが確認できる。つまり[ C ]を1-プロパノールと仮定したことが正しかったことがわかる。
    アルコール[ C ]は1-プロパノールCH3CH2CH2OHと確定できる。
    またエステル[ A ]は酢酸プロピル CH3COOCH2CH2CH3と確定できる。
  • (3)より[ D ]の生成は 解説図4 [ D ]は酢酸メチルCH3COOCH3と確定できる。
  • (4)より[ E ]の生成は 解説図5 [ E ]はプロペン(プロピレン)CH2=CHCH3と確定できる。
  • (5)より[ F ]の生成は 解説図6 [ F ]は2-プロパノール CH3CH(OH)CH3と確定できる。
  • (6)より[ G ]の生成は解説図7 [ G ]はアセトン CH3COCH3と確定できる。

<補足>

[ E ]に水を付加させる場合に、マルコフニコフ則に従い主生成物として2-プロパノールが生じるため[ F ]は2-プロパノールと考えたが、副生成物として1-プロパノールも生じる。

■マルコフニコフ則:「炭素原子間の二重結合にHX(Xはハロゲン族の原子、各種官能基など)が付加するとき、化合物HXのH原子は二重結合を形成している2つの炭素原子のうち直接に結合している水素原子の数がより多い炭素原子の方に結合する。」

ここで、10-2補足3で学習したザイツェフ則についても見直してみること。

掟20. 構造決定問題では、ザイツェフ則やマルコフニコフ則も利用できるようにしておくべし。