有機化学のオキテ9

掟9. アルケンは過マンガン酸酸化を受け二重結合が切断されることを知っておくべし。

問題

アルケンは,一般式CnH2nで表される炭化水素である。n=2,3のアルケンには,異性体は存在しないが,n=4以上になると,炭素骨格の違いや二重結合の位置の違いによる構造異性体の他に,シス・トランス異性体などの立体異性体も加わり,異性体の数は急に増える。例えば,C4H8のアルケンには(ア)種,C5H10のアルケンには(イ)種の異性体が存在する。これらの異性体の二重結合の位置を知る一つの方法として,次式に示す過マンガン酸カリウムによる二重結合の酸化的切断反応がある。ただし,R1~3はアルキル基または水素原子を表している。 問題図

ここに分子式C5H10のアルケンA,BおよびCがある。それぞれを過マンガン酸カリウムで酸化すると,AはDを,BはEを,CはFを与える。Dは分子式C4H8Oの化合物で,ヨードホルム反応により黄色の沈殿を生じる。EとFはいずれも分子式C4H8O2の化合物で,いずれの水溶液も弱酸性を示す。
また,アルケンA,BおよびCのそれぞれに,白金またはニッケル触媒を用いて水素を反応させると,AとBは同一の化合物を与えるが,Cはそれとは異なる化合物を与える。

  • 問1. (ア) (イ)に該当する数を答えよ。
  • 問2. 化合物D,EおよびFの構造式ならびに名称を記せ。構造式は下図の例にならって記せ。構造式の例
  • 問3. 化合物A,BおよびCの構造式を上図の例にならって記せ。
<福岡大学医学部>

解答と解説

<解答>

  • 問1. (ア)4 (イ)6
  • 問2. 下図 構造式2
  • 問3. 下図 構造式3

<解説>

  • 問1. 解説図1-1 解説図1-2
  • 問2. DはC4H8Oの分子式を持ちヨードホルム反応を示すのでCH3COCH2CH3(エチルメチルケトン)である。EとFは弱酸性でC4H8O2の分子式を持つのでカルボン酸でありCH3CH2CH2COOH(酪酸)かCH3CH(CH3)COOH(イソ酪酸)である。
  • 問3. 過マンガン酸カリウムによりアルケンが酸化されると 解説図3-1 のように変化する。D,E,Fはいずれも炭素数が4でA,B,Cに比べて炭素数が1減少しているので,A,B,C共に(3)の酸化を受けたことが推定される。すなわちA,B,C共にCH2=の構造を持っていたと推定される。またAとBは水素を付加させると同一の化合物になることや,Dが-CO-(ケトン)の構造を持つのでAが(1)の酸化を受けたことや,E,Fが-COOH(カルボン酸)の構造を持つのでB,Cが(2)の酸化を受けたこと等から問題文中の反応は次の図のように考えられる。 解説図3-2

掟9. アルケンは過マンガン酸酸化を受け二重結合が切断されることを知っておくべし。
オキテ9