以下の記事は2014年時の記事です。
Vol.05 「移植を脳死に頼れるか」
杏林大学医学部の島崎教授によれば、「年間の脳死患者の発生数は、3,000~4,000と推定されている。厚生労働省調査によるデータでは年間1,695例と報告されている。[内訳:クモ膜下出血29.7%、頭部外傷29.6%、脳出血20.4%、その他のCVA(脳血管障害)8.2%、蘇生後(6.2%)、その他の二次性脳疾患(2.5%)、その他の一次性脳病変(1.5%)、不明(1.9%)]
脳死者の発生場所はほとんど(80%)が救命救急センターである。」 とのこと。
さらにそのうち、本人が臓器提供意思表示カードを持っていて家族が当該判定を拒まないとき、または家族がないときに限り、脳死判定が行われてきたのです。
日本臓器移植ネットワークによると、臓器移植法(改正前)施行後(平成9年10月16日~平成19年12月末日現在)、亡くなった方が臓器提供意思表示カード(シール)を持っていたことがわかった件数は、合計1,397件です。
ですから、脳死判定が行われる数でさえかなり限定され、臓器提供はさらに少ないことになります。
脳死判定され臓器提供にいたる数は、啓蒙活動やネットワークの改善などによってある程度増やすことは可能かもしれません。しかし、臓器提供が移植希望者数に対して圧倒的に少ない現状の原因が構造的な問題である限り、解決は難いことのように思われます。
となれば、移植を脳死に頼るということ自体、無理があるように思えてなりません。しかし、移植以外に助かる道のない患者さんは数多い……。
未来の“再生医療”や“人工心臓”に期待するしかないのでしょうか。
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