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以下の記事は2015年時の記事です。

Vol.16 「脳死」

ここで脳死について復習しておこう。脳死には次の二種類がある。

Ⅰ.脳幹死・・・脳の機能で自律的肺呼吸の運動をつかさどる場所(脳幹)の損壊。
Ⅱ.全脳死・・・脳幹を含め、大脳や小脳までも損壊した状態。

国によって脳死判定をⅠかⅡのどちらかに定めている。イギリスはⅠであるが日本はアメリカと同様Ⅱである。

「死」の判定は通常3兆候(徴候)によって為される。3兆候死とは、

イ.心拍動の停止。
ロ.自発的呼吸運動の停止。
ハ.瞳孔の散大(対光反射反応の消失)。の3点である。

国によってハを除いた2兆候死判断の所もあるが、日本では以上の3兆候を死の判定基準としている。

しかしここで大変おかしなことが起こってくる。脳死判定がⅠであろうがⅡであろうが最初の死が認められ、次にやってくる3兆候死によって例えばイならば心臓死ということになり2度目の死が判定される。すなわち、この人には死が2回訪れるという矛盾が起こるのだ。

では、大脳も小脳も機能を失っているが脳幹だけは未だ機能を保持している状態は何と呼ぶのか。自発的呼吸を行ってはいるが、意識がない状態のことである。これを【植物状態】とか【植物人間】とか呼んでいる。よってこの状態は脳死とは区別されねばならない。最近では昏睡状態に「深」を付けて「深昏睡状態」と言うことが普通になってきた。これだけでは「脳死」か「植物状態」かの区別は付けにくい。たまに「脳死者が生き返った」というニュースを聞くが、それはありえないことである。「脳死」と判断された状態の人間が生き返ることはないのである。多分「植物人間状態の患者」を医者が診誤って「脳死」と判定したのであろう。

ではなぜこれ程まで「脳死」にこだわるかと言えば、それは臓器提供の条件に係ってくるからである。臓器提供は臓器(例えば心臓のような基幹臓器)摘出と同時に提供者に確実な死をもたらすことなのだ。前述した「死体からの臓器摘出は何ら問題はない」が、「生者からの臓器摘出は殺人に繋がる可能性がある」からである。