以下の記事は2013年時の記事です。
Vol.17 「浮遊粒子状物質 PM2.5」
このところテレビなどで吸い込むと健康を害すると “PM2.5問題”が騒がれている。2013年1月に、福岡市など西日本の観測所で通常より3倍ほど高い観測値が出たからだ。偏西風に乗って大陸から飛来した汚染物質が数値上昇の原因との見方が強く、北京を中心に深刻な問題になっている “中国の大気汚染”が「ついに日本にも影響を及ぼし始めたのでは」という懸念が広がった。
浮遊粒子状物質は、英語のSuspended Particulate Matterの頭文字をとってSPMと略称され、大気中に浮遊する粒子状物質のうち、粒径10μm(百万分の1メートル)以下のものをPM10、PM2.5とは粒径2.5μm以下のものをいう。
粒径は人の健康に大きくかかわっている。空気中のPM2.5は、粒径が髪の毛の太さの1/30と小さいため、普通のマスクでは粒子が通り抜けて役に立たない。人の呼吸器は口・鼻から咽頭、喉頭を経て気管から気管支へと続き、最後に肺胞に達する。気道は折れ曲がり分岐を繰り返しながら、次第に細くなっていく。その過程で粒子は大きさにしたがって気道に沈着する。大きい粒子は気道の上部に沈着する割合が多く、一方細かい粒子は気道の奥まで達する割合が多くなる。微小粒子ほど肺胞など気道の奥まで達し、その結果ぜんそくの原因になるなど、人の健康に悪影響を与える。微小粒子の大部分は人工物由来で、化石燃料が燃焼して生じた粒子や、ガス状の大気汚染物質が二次的に大気中で粒子に転換したものである。これらの粒子は自然物由来の粒子よりも毒性が強い成分を多く含んでいるいと考えられる。
そして、このPM2.5はタバコの煙にも含まれている。部屋の中でタバコを吸うと、その部屋のPM2.5は200~700μg/㎥ に達するといい、いま中国で問題となっている大気汚染濃度と変わらないという。北京市民は、タバコの煙がもうもうとした部屋の中と同じくらい健康を害する、汚れた空気を呼吸し暮らしていることになる。
ところで、汚染物質の日本への飛来は10年以上前から始まっていた。想定外などという言い訳をせずに済むよう、冷静に対策を考え警戒していくことが重要だろう。
2018年度版 / 2017年度版 / 2016年度版 / 2015年度版 / 2014年度版 / 2013年度版
- Vol.18:
- SFTS 重症熱性血小板減少症候群
- Vol.17:
- 浮遊粒子状物質 PM2.5
- Vol.16:
- 高病原性 鳥インフルエンザ
- Vol.15:
- インフルエンザウイルス
- Vol.14:
- インフルエンザ
- Vol.13:
- 新型コロナウイルス感染症
- Vol.12:
- 核分裂生成物/放射線・放射性物質・放射能/被曝(ひばく)/被曝許容限度
- Vol.11:
- 放射線障害 しくみ/放射線障害 しきい値
- Vol.10:
- ベクレル(Bq)/グレイ(Gy)/シーベルト(Sv)/ベクレル・グレイ・シーベルトの関係/ベクレルとシーベルトの換算
- Vol.09:
- 新しい出生前遺伝学的検査
- Vol.08:
- 臓器移植法改正後の問題点
- Vol.07:
- 子供の脳死と臓器移植
- Vol.06:
- 移植を脳死に頼れるか
- Vol.05:
- なぜ脳死が問題になったか/脳死とはなにか/脳死判定基準
- Vol.04:
- 小児脳死臓器移植/小児脳死臓器移植の今後
- Vol.03:
- 再生医療
- Vol.02:
- iPS細胞年表/iPS細胞概要/iPS細胞用語
- Vol.01:
- 山中伸弥京大教授にノーベル賞/ノーベル賞