以下の記事は2013年時の記事です。
Vol.03 「再生医療」
再生医療とは、欠損したり機能障害、機能不全に陥り自然には再生できない臓器や組織を人工的に再生させ、機能を回復することを目的とした医療です。広い意味での再生医療には、人工物を使い機能回復する方法や臓器移植なども含まれますが、今のところこれらの方法には限界があるため、最近は細胞を利用した再生医療が注目されています。
再生医療に利用される可能性がある細胞としては、ES細胞、iPS細胞、体性幹細胞などが挙げられます。
- ES細胞(胚性幹細胞、Embryonic Stem Cell)は、受精卵が何回かの分裂、増殖を経て成長した胚の中に存在する若い細胞です。どのような細胞になるかは運命づけられていないため、あらゆる細胞に分化できる分化万能性を持ち、培養して分化を誘導できれば必要な組織や臓器を作り出せる可能性があります。ただし、ES細胞を得るためにはヒトの受精卵を破壊する必要があるという倫理面の問題や、腫瘍化する場合があるという問題が存在します。
- iPS細胞(人工多能性幹細胞、Induced Pluripotent Stem Cell)は、皮膚などの細胞に遺伝子を導入して作られ、やはり分化万能性があります。患者本人の皮膚細胞などを利用するため、倫理上の問題や拒絶反応の問題を回避することができますが、ES細胞と同様に腫瘍化する場合があるという問題が残っています。
- 体性幹細胞は、組織や臓器ごとにわずかに存在し、由来する細胞により限られた種類の細胞にしか分化しないものから、広範囲な細胞に分化するものまで様々な種類のものがあります。患者本人から採取するため、iPS細胞と同様に倫理面の問題や拒絶反応の問題を回避することができますが、組織や臓器に含まれる数は少なく、分化能が限られているものや培養して増殖させることが困難なものが多くあるため、実用化するためにはまだ色々な研究が必要です。
細胞を利用した再生医療はまだ発展途上ですが、現在では造血幹細胞を用いた治療、皮膚・軟骨・骨移植、心筋や神経細胞の再生などの治療などが行われ始め、実験的には組織や臓器の再生も研究が進んでいます。
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