有機化学のオキテ47

問題

生ゴムは分子式C5H8で表される(a)が付加重合してできた天然高分子化合物である。(a)は分子内に二重結合が(b)個存在するので、付加重合すると、単量体一分子あたり(c)個の二重結合が残存する。また、生ゴムは構造式①のような、(d)型の構造を持つため弾性を生じる。さらに、(e)とよばれる操作を加えると、生ゴムの耐久性と弾性が著しく増大する。これは、ゴムの分子間に硫黄原子による(f)構造が生じるからである。構造式②は、生ゴムの異性体でグッタペルカとよばれ、結晶化しているために弾性にとぼしい。一方、ブタジエンとスチレンを(g)させたスチレン-ブタジエンゴムや、ブタジエンとアクリロニトリルを(g)させたアクリロニトリル-ブタジエンゴムなどは、合成ゴムとよばれ耐摩耗性や耐油性などに優れている。

  • 【問1】文中の構造式①と②に該当するものを(A)~(D)の中から選び、記号で答えなさい。 問1
  • 【問2】文中の(a)(g)に適した語句または数値を記入しなさい。
  • 【問3】スチレン-ブタジエンゴム26.6gに、触媒の存在下で水素を完全に付加したところ、水素は標準状態で6.72l必要であった。この合成ゴム中のスチレンとブタジエンの物質量の比を整数で答えなさい。ただし、フェニル基には水素が付加しないものとする。なお、原子量をH=1.0、C=12とする。
  • 【問4】(e)の操作を行わないとゴム中のC=C結合が分解されて劣化しやすくなる。この劣化の主要な原因となる空気中の微量成分は何か。物質名で答えなさい。

<日本医科大学>

解答と解説

<解答>

  • 【問1】 構造式①(A) 構造式②(C)
  • 【問2】(a)イソプレン (b)2 (c)1 (d)シス (e)加硫 (f)架橋 (g)共重合
  • 【問3】 スチレン:ブタジエン=1:3
  • 【問4】 オゾン

<解説>

  • 【問1、2】 生ゴム(天然ゴム)はC5H8で表されるイソプレンが付加重合してできた高分子化合物である。イソプレンは分子内に二重結合が2個存在するので(共役二重結合)付加重合すると単量体一分子あたり1個の二重結合が残存する。 解説図1 また、生ゴムは構造式①(A)のようなシス型の構造をもつため弾性を生じる。さらに加硫と呼ばれる操作を加えると、生ゴムの耐久性と弾性が著しく増大する。これは、ゴムの分子間に硫黄原子による架橋構造が生じるからである。構造式②(C)は生ゴムの異性体で(トランス型の構造をもつ)グッタペルカと呼ばれ、結晶化しているため弾性にとぼしい。 解説図2 一方ブタジエンとスチレンを共重合させたスチレン-ブタジエンゴム(SBR)やブタジエンとアクリロニトリルを共重合させたアクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)などは、合成ゴムとよばれ耐摩耗性や耐油性などに優れている。 解説図3
  • 【問3】スチレン-ブタジエンゴムの分子中にはスチレンとブタジエン由来の次図のような構造が存在する。 解説図4 1つのブタジエン由来の構造には1つの二重結合が残っているので、水素が1分子付加する。よって、付加した水素の物質量はそのままスチレン-ブタジエンゴム26.6g中のブタジエン由来の構造の物質量であり、それは合成に使用したブタジエンの物質量を表す。 解説図5 合成に使用したブタジエン(分子量54.0)の物質量も0.300molなので、その質量を求めると 解説図6 合成反応は付加反応だけなので、全体の質量からブタジエンの質量を引けばスチレンの質量が求められる。 解説図7 スチレンの分子量は104なので、物質量を求めると 解説図8 よってスチレン-ブタジエンゴム中のスチレンとブタジエンの物質量の比は 解説図9
  • 【問4】空気中の微量成分であるオゾンはC=C結合をオゾン分解するので、加硫によってあらかじめC=C結合どうしをSで架橋しておく。

<補足>

合成ゴムとしてはクロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)などもある。

補足図

掟47. それぞれのゴムのモノマーを覚え、加硫や共重合などについて説明できるようにしておくべし。