先輩医師インタビュー

「人よりできなくて悔しくないのか」と言われながら頑張っています。

―朝は何時から仕事ですか?

帝京大学医学部付属病院勤務
前野 佐和子さん(旧姓 中園)
98年度昼間部在籍
帝京大学医学部付属病院勤務
(インタビュー当時)

7時半に出勤して、8時から回診です。今、一段落したところ。

―どの科にいるんですか?

肝胆膵外科…外科の中でも最も苛酷と言われるところです。手術が長時間かかって、大変なのだと15~6時間。朝8時半に入って翌朝8時半に出てきた、なんてのもありますね。まあ、ふつうは5~6時間で終わるんですが。

―大変ですねえ。

うち(帝京大学医学部附属病院)は膵臓が有名で、門脈とか腹腔動脈に浸潤があって「適応外」と言われた人たちが集まってくるので、なおさら大変です。私は下っ端なので、基本的に何もやってないんですが(笑)。おまけに今は研究職で…。大学院に入って博士号をとるために論文を書いている途中です。

―論文のテーマは?

企業秘密、ということで(笑)。今月中に副論文1個仕上げて、全部で論文1個に副論文2個仕上げないと…。

―休みはとれてますか?

全然(苦笑)。いちおう月に2日ぐらいはとれてるかなあ…。病棟勤務を12時ぐらいまでやって、そのあと自分の仕事をやってると、当直でなくても帰れないことが多いです。寝るときも、眠るというより「気絶」(笑)。

―結婚してましたよね。

結婚してるけど、独身みたいです。ダンナとは、週に1~2回ぐらいしか会ってない(笑)。ダンナが理解のある人だから、自分の好き勝手ができてます。

―女性は少ないですか?

うちの外科は女が1人しかいません。もともと外科はQOLが悪いので、あんまりなりたがらないし。

―QOL? Quality of Lifeですよね。誰の?

あ、ドクターのQOLです(笑)。医者って華やかそうに見えるけど、めちゃめちゃ地味ですよ。忙しすぎてお金をつかう暇もありません。なんたって覚えなきゃいけないことがたくさんあるんです。手技だけじゃなくて、内科的知識も学問的知識も覚えなきゃいけないし、術後の管理もしないといけないし、あとは内視鏡の手技とか、化学療法とか放射線とか、それから外勤もあるし。

―時間が足りない?

2~3時に家に帰って洗濯機回して犬の世話してチョコチョコっと寝て、すぐ出勤…。あんまりこんなことばっかり書いたら、読んだ人は医者になりたがらなくなっちゃいますよ(笑)。

―そんな大変な科を、なぜ選んだんですか?

ほんとにねえ(笑)。大学に入って院内実習したら、大学病院ってこういうところなんだ、「医者」ってこうなんだ、って。それまで持ってた「医者」のイメージと全然違ってて。卒業するときに結婚したんで、ほんとは「幸せな家庭に入ってヌクヌクと…」という予定だったんですが(笑)。

―予定と違っちゃいましたか。

大学で知識を詰め込んで、いざ病棟へ出ると、何もできない。目の前に、大変なことになってる患者さんがいるのに。でも、最初に肝胆膵外科に行ったときに、手技を見て「何でもできちゃうんだな、かっこいい」って思って(笑)。 で、私にもできる簡単なオペをやらせてもらえて、間違って「おもしろい」って思っちゃったんです(笑)。

―「間違って」(笑)。

あこがれてた先生がいたというのもありますけど。神業みたいだなあって。まあ、怒られまくりですが。「人よりできなくて悔しくないのか」とか言われて。怒られて覚えることも多いです。

―手術は大変でしょう。

大変だけどおもしろいですね。自分がオペレーターになるのは、胆嚢をとる手術とか腸管の吻合とかですが。とにかく、ダイエットだと思って(手術室に)入ってます。

―ダイエット?

間違いなく痩せますから(笑)。

(というあたりで時間切れ。「大変だ」という割には、とても明るくエネルギッシュでした。今後の活躍を期待しています)