What's 「言語」?
What's 「言語」?
第5回 英文和訳は「和作文」
 まずは、「大統領選立候補検討中か」と報じられた時のオバマさんの発言から。
■ I am not sure anybody is ready to be president before they are president.
 「この文を日本語に訳してみてください」と言われると、
■「私は、誰もが、彼らが大統領になる前から大統領になる準備ができているとは、確信しません」
 という感じに訳す生徒諸君が多くて困ります。
 はっきり言って、ひどい日本語です^^;
 ちゃんとした日本語にできないために、訳してはみたものの文の意味がとれなくて立ち往生する例が、往々にして見られます。
 しかしその状況を、「和訳はこんなもの」と放置してしまいかねないのが、現在の「英語教育」です。
 英語は教えても、日本語を教えない。
 だから当然、英語と日本語の違いも、そしてそこから生じる置き換えルールも、教えないのです。
 (教えないのではなく、教えることができないのかもしれませんが)
 英語と日本語では、まず第一に、「主語」の働きが全く異なります。
 英語には、原則として主語が不可欠である上、(最初に副詞・副詞句・副詞節を置く場合を除いて)主語は冒頭に置くのが決まりです。
 言い方を変えれば、「主語を置かないといけないので、意味的には必要のない場合でも、置かざるを得ない」と考えた方がいいでしょう(It rains.のItなどは、その典型ですね)。
 そして(これまた一部の副詞が挟まる場合を除いて)直後に述語を置きます。
 日本語では、原則として述語は文末に置きます。
 そして「主語」は他の修飾語と同様どこに置いても構わないばかりでなく、「主語」が存在しない文も決して珍しくありません。
 そもそも「主語」が必須ではないのです。
 これらのことから、「主語」という概念を認めない考え方もあるくらいです。
 英語と日本語の間で「主語」の役割が異なれば、その「位置づけ」も当然異なります。
 第1回で取り上げた「係る言葉は長い順」というルールに従えば、よほど長い「主語」でない限り、できるだけ述語の近く、すなわち文末の近くに置くべきだ、ということになります。
 第二に、英語と日本語では、当然ながら単語の「守備範囲」が異なります。
 日本語の中でも和語(やまと言葉)は、とくに1語の守備範囲が広く、thinkもsureもsupposeも、たいていは「思う」の守備範囲に収まります。
 ちなみに、和語は漢語と比べても1語の守備範囲が広いことが多く、たとえば「明確」も「明白」も「明らか」という和語の範囲に収まります。
 ですから、「迷ったら和語で訳す」というワザは、なかなか使えます。
 第三に、否定の仕方が、英語と日本語では異なります。たとえば、
■ I don’t think it will rain.
 「降るとは思いません」よりも、「降らないと思います」という方が、たいていの場合、自然な日本語です。
 I’m not sureも同様で、「〜ではないと思う」と訳した方が、より日本的です。
 以上のような「置き換え」は、「意訳」ではありません。
 英語と日本語の違いに基づき、ルールに則って変換している「直訳」の一種に過ぎません。
 このような「置き換え」は、「自然な英語で文を書く」ことが目標とされる和文英訳では、以前から強調されていました。「英作文」という語には、そういうニュアンスが入っているのではないでしょうか。
 しかし、少なくとも入試の英文和訳では、あまり脚光を浴びていないような気がしてなりません。
 おそらくは、明確な日本語教育がほとんど行われていないことと、関係があるのでしょう。
 英文和訳は「和作文」である、
 ということを、意識すべきではないでしょうか。
 レクサスの「言語」では、このような「和作文」も学習します。
 さて、以上の「置き換えルール」を使って冒頭の英文
■ I am not sure anybody is ready to be president before they are president.
 を「和作文」すると、次のようになります。
■大統領になる前から大統領になる用意ができている人は、いないと思います。

[第1回作文ルール(1)]

 第1回は、作文ルール「係る言葉は長い順」を取り上げます。

 「言語」の主要単元に「日本語の作文技術」がありますが、そこで学ぶルールの1つです。

 […[第1回作文ルール(1)]続きを読む]

[第2回作文ルール(2)「読点を打つとジャンプする」]

 読点「、」には「係り受けをジャンプさせる」という働きがあります。

■ 銭形警部は笑いながら逃げるルパンを追いかけた。

 という文について考えみましょう。

 […[第2回作文ルール(2)「読点を打つとジャンプする」]続きを読む]

[第3回日本語の現在(1)「ラ抜き言葉」の拡大]

 まずは、次の文をご覧下さい。

■その時間には来れません。なので、待っててもらっていいですか?

 どの程度、違和感を感じたでしょうか。

 「全く感じない」という方は、時代の最先端を走っています(笑)。

 […[第3回日本語の現在(1)「ラ抜き言葉」の拡大]続きを読む]

[第4回 日本語の現在(2)「なので」と書いてはダメなのです。]

 前回の例文再掲。

■その時間には来れません。なので、待っててもらっていいですか?

 今回は、「なので」と「もらっていいですか」を取り上げます。

 […[第4回 日本語の現在(2)「なので」と書いてはダメなのです。]続きを読む]

[第5回 英文和訳は「和作文」]

  まずは、「大統領選立候補検討中か」と報じられた時のオバマさんの発言から。

■ I am not sure anybody is ready to be president before they are president.

 「この文を日本語に訳してみてください」と言われると…

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>> レクサスの「言語」とは何か。
――中学時代こそ,「言語としての日本語」を正しく学ぶべき時期

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――レクサス独自の科目「言語」とは何か――5回にわたって詳しくご紹介します。

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