What's 「言語」?
What's 「言語」?
第4回 日本語の現在(2)「なので」と書いてはダメなのです。
 前回の例文再掲。
■その時間には来れません。なので、待っててもらっていいですか?
 今回は、「なので」と「もらっていいですか」を取り上げます。
 まずは、接続詞「なので」
 本来なら「だから」「ですから」を使うべきところ、かわりに「なので」を使う人が増えています。
 特にここ数年の広まり方は急速で、NHKのアナウンサーが使うのを見たことさえあります――当のアナウンサー氏が後で始末書を書かされたか否かは、定かではありません(笑)
 使う年齢層は今のところ(経験的に言って)40歳代ぐらいが上限でしょうか。高めの年齢層で見ると、女性の方が男性よりも多い気がします。
 「なので」は、断定の助動詞「だ」の連体形「な」、あるいは形容動詞の連体形の活用語尾「な」に、接続詞「ので」がついたもの。
 助動詞は付属語ですから単独では使えませんし、活用語尾も同様です。したがって、「なので」を自立語である接続詞として用いることは、現在の文法体系上「誤った使い方」ということになります。
 しかし、「だから」「ですから」も含め、大半の接続詞は同じような出自をもっています。ですから、口語(話し言葉)として公認される日は、そう遠くないかもしれません。
 現時点では、まだ『広辞苑』には載っていませんが、『三省堂国語辞典』と『新明解国語辞典』には載っているようです。
 広まった理由を推測すると、
◆「だから」「ですから」は、常体(「だ体」=「だ」「である」で終わる文体)と敬体(「ですます体」=「です」「ます」で終わる文体)の使い分けが面倒。
◆「だから」「ですから」に含まれる音「d」「k」は音が硬く、自己主張の強さを想起させる。それに対し、「なので」には「n」が2つ含まれ、柔らかいため、人間関係をギクシャクさせにくい効果がある。
 というところが考えられるでしょうか。
 ただ、いずれにしろ現時点では「ラ抜き言葉」同様、文語(書き言葉)に接続詞「なので」を用いることは認められていません。
 なので――もとい――ですから、文章を書く場合に用いてはいけません。
 「敬語の乱れ」は、ずいぶん前からよく話題になっています。
 とくに最近、「コンビニ敬語」「ファミレス敬語」と言われる妙な「敬語」が横行し、問題視されます。
 敬語の仕組みについて詳しく述べる紙幅はないので、歴史的経緯と基本的構造をざっと眺めてみましょう。
 「敬語」は本来、「身分語」でした。身分社会であった江戸時代以前、それぞれの身分の上下関係に応じて、使う言葉が決まっていました。
 ところが明治期に「四民平等」となり、「身分」がなくなって以来(福沢諭吉も言うように)人の「上下」がなくなったため、敬語の変質が始まりました。
 身分に上下はなくても、利害関係などの「上下」は存在するし、また人間どうしの「距離感」に応じて言葉を使い分ける必要もあります。そして敬語は、そのような「上下」「距離感」を表すものになってきたのです。
 ただそのような「上下」「距離感」は「身分」と違って曖昧なため、どういう場合にどのように使うべきか、とまどいが生じるのは必然かもしれません。
 割り切った言い方をすれば、現在敬語を用いるべき対象は、「礼儀正しく接しないと後々困る人」というところでしょうか。
 受験生にとっては、「面接試験の面接官」がその最たるものですね(笑)
 敬語は通常「尊敬」「謙譲」「丁寧」の3つに分類されます。
 これらが全部揃うと、最高レベルの「距離感」あるいは「上下」を表します。
 「丁寧」だけで「尊敬」「謙譲」の含まれない文は少々中途半端で、「慇懃無礼」な感じを与えるかもしれません。
 同時に、できる限り文語(書き言葉)を用いることが、礼儀にかなうことになります。
 さらに、主語を「自分(話し手)」にするよりも、「相手(聞き手)」にする方がより礼儀正しく聞こえます。
 さて、ここで冒頭の
■待っててもらっていいですか。
 を見てみると、
 「待ってて」=平語(敬語でない言葉を「平語」といいます)。「待っていて」のくだけた言い方。
 「もらう」=平語。主語は話し手。
 「いい」=平語。「よい」のくだけた言い方。
 「ですか」=丁寧語。
 「尊敬語」「謙譲語」が一切使われていないことがわかりますね。
 「もらう」を「謙譲語」にして、くだけた言い方をなくすと、
■待っていていただいてよろしいですか。
 あるいは
■待っていてくださいますか。
 となるでしょう。
 そして、話し手を主語とする「いただいてよろしいですか」よりも、聞き手を主語とする「くださいますか」の方が、より礼儀にかなうことになります。
 さらに「待つ」を尊敬語「お待ちになる」に、「いる」を尊敬語「いらっしゃる」にすると、
■お待ちになっていらしてくださいますか。
 これではクドい(笑)ので
■お待ちくださいますか。
 結局のところ、最初に掲げた例文
■その時間には来れません。なので、待っててもらっていいですか?
 は、次のように直すのが、現時点では最も「理に適っている」ということになります。
■その時間には来られません。ですから,お待ちくださいますか?

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 第1回は、作文ルール「係る言葉は長い順」を取り上げます。

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■その時間には来れません。なので、待っててもらっていいですか?

 どの程度、違和感を感じたでしょうか。

 「全く感じない」という方は、時代の最先端を走っています(笑)。

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[第4回 日本語の現在(2)「なので」と書いてはダメなのです。]

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[第5回 英文和訳は「和作文」]

  まずは、「大統領選立候補検討中か」と報じられた時のオバマさんの発言から。

■ I am not sure anybody is ready to be president before they are president.

 「この文を日本語に訳してみてください」と言われると…

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>> レクサスの「言語」とは何か。
――中学時代こそ,「言語としての日本語」を正しく学ぶべき時期

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――レクサス独自の科目「言語」とは何か――5回にわたって詳しくご紹介します。