What's 「言語」?
What's 「言語」?
What's 「言語」? 第2回 「読点を打つとジャンプする」
 読点「、」には「係り受けをジャンプさせる」という働きがあります。
■ 銭形警部は笑いながら逃げるルパンを追いかけた。
 という文について考えてみましょう。
 「銭形警部が」と「笑いながら」がつながっているため、「銭形警部が笑っている」とも読めますが、
■ 銭形警部は、笑いながら逃げるルパンを追いかけた。
 と読点を打てば、「銭形警部は」が「笑いながら」を跳び越して「追いかけた」に係るので、「銭形警部は笑わずに追いかけた。笑っているのはルパン」だと分かります。
 なお、日本語では倒置法でない限り、前の言葉に係ることはありませんから、次のように「笑いながら」を前に持ってくれば、「銭形警部は」の係る対象から外れます。
■ 笑いながら逃げるルパンを銭形警部は追いかけた。
 読点には「息継ぎの目印としての働き」もあるため、多過ぎると流れが悪くなってしまいますから、順序を変えて読点なしで済ませられれば、それに越したことはないのです。
 ところで、「係り受けをジャンプさせる」という働きのため、連体修飾の場合に読点を打つと不自然になります。
 「連体修飾」とは、体言すなわち名詞に係ることです。
 連体修飾語と修飾される体言(名詞)との間に、あわせて1つの名詞句になるという密接な関わりがあるので、「ジャンプ」の働きをもつ読点をはさんで分断するのは、不自然さを効果として狙う場合以外は避けた方が無難です。
 先の例文の連体修飾部分に読点を入れてみると、
■ 笑いながら逃げる、ルパンを銭形警部は追いかけた。
 「笑いながら逃げる」が宙に浮いてしまって、行き場をなくしていますね。
 今回も、応用演習として新聞記事を添削してみます。
■ イノシシによる農作物被害対策として前橋市は、イノシシの生息する山と、畑の間にある遊休農地などにヤギを放牧する事業を試験的に始めた。
 イノシシと戦わせる狙いではなく、背の高い草に隠れて動くイノシシの習性に着目し、遊休農地の草をヤギに食べさせてイノシシが畑に近づきにくくする作戦。遊休農地の所有者が草を刈る手間も省けるため、市農林課は一石二鳥と期待している。
 さて、問題です。どこにヤギを放牧するのでしょう?
(1) 山
(2) 山と遊休農地の両方
(3) 遊休農地
 第1段落を読む限り、(2)のように読めないでしょうか。でも第2段落を読むと、どうやら(3)が正解のようです。
 「山と畑」の間に読点を入れたために、「山」が「畑」を跳び越して、「遊休農地」に係るように見えてしまった訳です。
 読点を取り去り、「並列」の目印である助詞「と」をもう1つ使えば、そういう誤解はなくなるでしょう。
■ イノシシによる農作物被害対策として前橋市は、イノシシの生息する山と畑との間にある遊休農地などにヤギを放牧する事業を試験的に始めた。
 では何故ここに読点を入れたのか。おそらくは、読点なしに「イノシシの生息する山と畑」とすると、今度は「畑にもイノシシが生息している」という誤解を生みかねないからでしょう。
 もちろん常識的にみて、畑にイノシシが生息している可能性は少ないでしょうが、「事実は小説よりも奇なり」――世の中何が起こるか分かりませんね。ですから常識に頼らず、正確な文を書くに越したことはありません。
 この誤解を避けるには、どうすればいいでしょうか。
 「イノシシの生息している」が「畑」に係らないことを明らかにするために、「畑」を前に持っていって、
■ イノシシによる農作物被害対策として前橋市は、畑とイノシシの生息する山との間にある遊休農地などにヤギを放牧する事業を試験的に始めた。
とすればよいでしょう。
 もっともこの方法だと、「畑と」が「イノシシの生息する山と」よりも前にきて、「係る言葉は長い順」というルール(第1回参照)に反するため、若干不自然になってしまいますが、誤解を生まないためには仕方がありません。この問題をも回避するためには、根本的に書き直す必要があります……。

[第1回作文ルール(1)]

 第1回は、作文ルール「係る言葉は長い順」を取り上げます。

 「言語」の主要単元に「日本語の作文技術」がありますが、そこで学ぶルールの1つです。

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[第2回作文ルール(2)「読点を打つとジャンプする」]

 読点「、」には「係り受けをジャンプさせる」という働きがあります。

■ 銭形警部は笑いながら逃げるルパンを追いかけた。

 という文について考えみましょう。

 […[第2回作文ルール(2)「読点を打つとジャンプする」]続きを読む]

[第3回日本語の現在(1)「ラ抜き言葉」の拡大]

 まずは、次の文をご覧下さい。

■その時間には来れません。なので、待っててもらっていいですか?

 どの程度、違和感を感じたでしょうか。

 「全く感じない」という方は、時代の最先端を走っています(笑)。

 […[第3回日本語の現在(1)「ラ抜き言葉」の拡大]続きを読む]

[第4回 日本語の現在(2)「なので」と書いてはダメなのです。]

 前回の例文再掲。

■その時間には来れません。なので、待っててもらっていいですか?

 今回は、「なので」と「もらっていいですか」を取り上げます。

 […[第4回 日本語の現在(2)「なので」と書いてはダメなのです。]続きを読む]

[第5回 英文和訳は「和作文」]

  まずは、「大統領選立候補検討中か」と報じられた時のオバマさんの発言から。

■ I am not sure anybody is ready to be president before they are president.

 「この文を日本語に訳してみてください」と言われると…

 […[第5回 英文和訳は「和作文」]続きを読む]

>> レクサスの「言語」とは何か。
――中学時代こそ,「言語としての日本語」を正しく学ぶべき時期

>> What's 「言語」?詳細版。
――レクサス独自の科目「言語」とは何か――5回にわたって詳しくご紹介します。

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