有機化学のオキテ

<18>芳香族炭化水素の構造決定
掟26.分子式C8H10で考えられる芳香族炭化水素の異性体,酸化生成物とそれから生じる酸無水物,ベンゼン環の水素を置換した異性体数を整理して覚えておくべし。

<18-1>

次の文の(   )の中に,適当な数値,原子番号,名称,実験式,分子式あるいは構造式を記入しなさい。

C=12.0, H=1.00 O=16.0。 (有機化学のオキテP52)

〔Ⅰ〕芳香族炭化水素である化合物〔X〕の分子式はC8H10である。

〔Ⅱ〕この化合物〔X〕を酸化したところ,カルボン酸である化合物〔Y〕が得られた。この化合物を〔Y〕33.2mgを水に溶かして100mlにした溶液を0.100mol/l水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和したところ4.00mlを要した。

次に化合物〔Y〕を急に熱すると,水を失って化合物〔Z〕が得られ,その元素分析値は炭素64.87%,水素2.72%,酸素32.41%であった。また化合物〔Z〕の分子量を測定したところ148であった。

これらの実験結果から,脱水される前の化合物〔Y〕は( (1) )価のカルボン酸で,その分子式は( (2) )であり,化合物〔Z〕の分子式は( (3) )であることがわかる。

〔Ⅰ〕,〔Ⅱ〕を総合すると,化合物〔X〕の名称は( (4) ),構造式は( (5) ),化合物〔Y〕の名称は( (6) ),構造式は( (7) ),化合物〔Z〕の名称は( (8) ),構造式は( (9) )である。とくに,化合物〔Y〕には2種の構造異性体があり,その構造式はそれぞれ,( (10) ),( (11) )で表される。

<獨協医科大学 一部改>

<18-1>解答と解説

有機化学のオキテP157

<解答>

(1) 2

(2)C8H6O4

(3)C8H4O3

<解説>

芳香族炭化水素C8H10の構造異性体と酸化生成物は次図のようになる。

これらの酸化生成物のうち加熱して脱水し酸無水物となるのはフタル酸のみである。

化合物〔Z〕のC,H,Oの割合を求めると

よって〔Z〕の組成式はC8H4O3(式量148)となる。与えられた分子量と組成式量が一致しているので〔Z〕の分子式はC8H4O3と確定し,無水フタル酸の分子式と一致する。

化合物〔Y〕33.2mgの物質量をnmol,〔Y〕を2価のカルボン酸であると仮定すると,水酸化ナトリウムとの中和の量的関係より

〔Y〕の分子量は以下のようになり、フタル酸の分子量と一致する。

以上の計算より〔X〕はO-キシレン,〔Y〕はフタル酸,〔Z〕は無水フタル酸であると考えられる。また〔Y〕の2種の構造異性体はイソフタル酸とテレフタル酸と決まる。

<補足>

1. 無水フタル酸はフタル酸を加熱すると生成するが,ナフタレンをV2O5を触媒として空気酸化しても生成する。

2.キシレンのベンゼン環をモノニトロ化した場合を考えると,そのモノニトロ化体の数は次図のようになる。

モノニトロ化体の数が問題文で与えられて,のどのキシレンかを判断させられる場合があるので対応できるようにしておくこと。
(キシレンのベンゼン環の水素が1つハロゲン原子に置換される場合も同様に考えて対応する。)

掟26. 分子式C8H10で考えられる芳香族炭化水素の異性体,酸化生成物とそれから生じる酸無水物,ベンゼン環の水素を置換した異性体数を整理して覚えておくべし。