医学部最新入試事情

医学部受験の最新のトレンドや傾向について。

医学部入試はどうなっているか

定員は増えている

平成16 年(2004 年)度の研修制度変更以降、顕在化した「医師偏在」を問題視してきた政府は、平成20 年(2008 年)になって「医師不足」と認識を改め対策を進めた。その中心は医学部医学科の定員増であり、文部科学省は平成20 年度から毎年入学定員を増やし、平成28 年(2016 年)度の定員総数(計画)を9,262 人とした。(平成28 年度からの私立医学部の収容定員の増加に係る学則変更認可の諮問について:文部科学省 平成27 年10 月20 日)つまり、平成19 年(2007 年)度に7,625 人であった定員が平成28 年(2016 年)度には9,262 人まで増えたのである。なお、国際医療福祉大学が医学部新設の認可を受け、平成29 年(2017 年)4 月に新設される(医学部定員140 名)。

医学部入試はどうなっているか

受験者はもっと増えている

募集定員は増えている。では、受験者数の推移はどうだろう。

国公立・一般入試の倍率は7~8倍程度で増減を繰り返している。

それに対し、私立一般入試(センター利用入試・地域枠含む)の倍率は、2008 年度の26.8 倍が、2009 年度には24.6 倍と下がったものの、その後25.6 → 26.5 → 27.4 → 31.1 と推移し、2014 年度には34.5 倍となった。

実質倍率、つまり受験者数÷合格者数も増加を続け、2014 年度は17.8 倍となっている。

その背景には、入試形式の多様化と、入試日程の分散化がある。つまり、受験する機会が増えたために、競争はかえって激化しているのである。

医学部に滑り止めなし

一方、志願者の多さも、上記のように並ではない。

国公立大学は、センター試験でふるいにかけたうえでも10 倍以上の狭き門がザラだし、私立医学部一般入試の志願者も、わずか数十名の募集人員に対して軒並み1,000 名以上、場合によっては3,000 名を超える受験生が殺到する。

しかも注目すべきは「旧設医学部」であろうと昭和40 年代に創立した「新設医学部」であろうと、受験生の多さに差はない、という点だ。

たとえば2013年度から入試を前期・後期に分けた藤田保健衛生大学は「新設医学部」だが、2016年度前期が募集人員の28.8倍、同後期は88.1 倍(受験者÷募集人員)というとんでもない数の受験生が受験している(2017年藤田保健衛生大学後期試験廃止)。

その背景には「新設医学部」の医学教育に対する努力がある。医師国家試験の合格率で比べても、新旧の差はない。むしろ新設医学部が率先して伝統的教育法を見直しており、旧設の各大学がそれに続いているというのが現実だ。

とにもかくにも、今や医学部に「滑り止め」はないのだ。

医学部合格のためのポイント

穴があったら入れない

医学部入試は、得意科目がいくら強くても、不得意科目や不得意分野があるとカバーしきれない、というやっかいな特徴がある。

英語・数学・理科に関しては、まんべんなく基礎を固めておかなければならないのだ。それはひとつには、受験生が多いため、1点、2点の差にたくさんの受験生がひしめいているということにもよる。だが何よりも、大学が「まじめで、努力ができて、大量の情報をてきぱき処理できる」学生を求めているのが大きい。だから入試問題も、「切れ味」よりは「全範囲をきちんと学習したか」を問うものにならざるをえないのだ。

その結果受験生は、隅から隅までシラミつぶしに、苦手をなくす勉強を強いられることになる。「苦手をなくす」のは受験一般に通じる攻略法だが、医学部の場合、それがいっそう顕著なのだ。

膨大な範囲をいかに効率よく勉強するか、が合格のカギとなるのである。

大学ごとの傾向は

志望校の傾向を研究せよ、とよくいわれる。これはある意味正しいが、ある意味ではまちがっている。

出題「形式」がマークシート主体か記述主体か、問題の分量は多いか少ないか、難易度はどうか、といった点は、たしかに大学によって「傾向」がある。事前に研究し、慣れておくべきだ。

だが出題「内容」には、実はそう顕著な違いはない。だから、受ける大学を絞ってその過去問ばかり解く、というのは決して得策ではないのだ。基本的知識に弱点がないか、鵜の目鷹の目で出題されると心得て、勉強する内容を見極める必要がある。その点さえふまえれば、大学別の対策を立てることには十分意味がある。上手に利用しよう。

模擬テストの利用法

予備校の多くは各種模擬テストを実施している。自分の実力を知るうえで欠かせないが、その成績表の利用のしかたには注意が必要だ。

まず、大手予備校の模擬テスト。各科目の「得点」自体にはあまり意味がない。問題の難易度は、調整されているとはいえ、毎回変化する。だから得点は下がっても順位は上がる、などということは日常茶飯事。

利用価値があるのは「偏差値」だ。偏差値は、おおむね25 ~ 75 の範囲での自分の位置づけが分かる数字。平均点なら50になるわけだ。偏差値は、どういう学力の者がその模試を受けたかによって異なってくる。だから、どの模試でどのくらいの偏差値があればいいのかについては、適切なアドバイスを受ける必要があるが、大ざっぱにいえば、全科目が偏差値60 を超えて安定すれば、医学部の合格が見えてくるといっていいだろう。

なお、「志望校判定」はあまり重視しないでよい。「A判定」が出ることはそもそもめったにないし、「B判定」以降はたいてい一定の偏差値ごとに区切ってあるだけだからだ。「C判定」が出れば見込みあり、という程度に思っておけばよいだろう。

医系専門予備校の行う模擬テストは、数をたのみとする統計の点からすると若干心もとなく感じられるが、一人ひとりの実力をこまめに評価してくれる点は、大手に真似のできないところだ。

それぞれの模試の特徴をふまえて活用したい。

面接と小論文

大部分の医学部で、学科試験のほかに面接と小論文を課している。いずれも人間の生命を預かる者としてふさわしいかどうかを見るためのものだ。

とはいっても、重視のしかたは大学によりずいぶんと異なっている。面接を複数回行う大学もあれば、5分程度で済ませるところもある、という具合だ。最近はグループディスカッションを取り入れる大学も増えている。正確な情報を得て対策を立てよう。

基本的には、人の話がきちんと聞けて、自分の考えをはっきり述べられれば、面接も小論文も恐るるに足らず、と思っていい。ただし、誤字脱字は非常に印象を悪くするので、注意が必要だ。

もっとも、あまりに世の中の動きを知らないと突っ込まれることがあるので、普段から新聞には目を通す習慣をつけておいた方がいい。付け焼き刃では少々心もとないからだ。

センター利用入試

最近は私立大でもセンター試験に参加するケースが多い。医学部の参加も徐々に増えている。

センター利用入試の倍率は、非常に高い。そのためセンター試験で必要な点数は、国公立医学部合格に必要な点数とほぼ同じと考えていい。ただ、必要な科目は国立より少ない。

いずれにしろ、とりあえずセンター試験は受けておいて損はない(万一失敗しても、最後の模擬テストと考えればよいのだ)。

推薦された後が問題の推薦入試

推薦入試は、近年、多様化が進んでいる。その代表的なものは、指定校推薦と一般(公募)推薦。

指定校推薦は学校ごとに人数の割り当てがあるが、実は競争率が3~4倍となる場合が多く、決して安心してはいられない。

一般推薦(公募推薦)もまた狭き門である。推薦そのものは比較的簡単にとれるが、倍率4倍程度は覚悟すべきだ。2016 年度の近畿大学推薦入試のように、30 名の募集に721 名(24 倍)が殺到するという場合もある。

推薦入試は、推薦されたからといって安心はできないのである。