現役東大生理Ⅲブログ

東大生TMNブログ~大学生活編Vol.32~ 2012年4月

大学生活編|現役東大生理Ⅲブログ

新学期に入り、とうとうはじまりました。解剖です。

実習室のドアを開くと、真っ白な実習室で無機質に並ぶアルミの解剖台の上、白のビニールに包まれた人間大のものが置かれている、この光景にまずズシンときました。自分の話になりますが、4人の祖父母は未だピンピンしており、リアルな死というものを体験したことはありません。ビニールを取り去るために遺体を持ち上げる、その重さが、僕の人生に初めて立ち現われた死でした。

生徒5人につき一体の遺体が当てられます。白衣の上に前掛け、ハンドカバー、ゴム手袋を着用し、顔には防腐処理用のホルムアルデヒドマスクによる中毒を防ぐため、マスクをあてます。白帽も被ると見えるのは両眼だけ、知り合いを判別できるかも怪しい姿をして、実習を進めていきます。

露にされた遺体の色褪せた皮膚に、手引きに従ってメスを入れ、真皮と皮下組織の境で皮膚を剥いでいきます。身体の浅い地点を走る動静脈や神経を観察するため、深く切りすぎないよう、刃の当て方に注意します。その下では脂肪が体中を覆っているのですが、固定を経たそれは、ちょうどフリースのようにもさもさして、濃い黄色をしています。所々に変色した部位が見られるのは、褥瘡で組織が壊死してしまったためです。

東大で実習に用いられる遺体は100%が献死体で、授業の始めには黙祷が行われました。ある班では乳癌のために乳房が無かったり、ある班では人工透析跡の縫い目があったり、生前の痕跡がまざまざと見受けられます。一般的に死体を切刻むことは禁じられており、それが許されるのは医学部で厳格な条件を満たした場合に限ります。解剖は、こうした社会のグレーゾーン、さらには生死のグレーゾーン、そのぎりぎりの所で行われる作業なのだと思います。

乾燥防止のため、作業を行わない部位の覆いはしたままです。そのため、遺体の顔は見ていません。今は想像以上に坦々とやれている気がしますが、顔を割く時にそれがどうなるか、不安でもあります。。